はじめてのお風呂①

7月某日 朝6時 S市某所
私はビル群のなか、車止めに腰掛け、紙パックの野菜ジュースを啜っている。

傍らで弄ぶ携帯電話には 発信中 の文字。
私が今から向かう場所、ソープランドへの電話である。

私はソープランドを利用するのが初めてである。過度な期待は禁物といえど、胸の高鳴りは抑えられない。

朝6時過ぎということもあり、Yシャツにスラックスの中年男性が目立つ。この時間から労働など勘弁してほしいものだと彼らに同情する。

片道4車線の大通りから1本路地に入る。
新進気鋭のビジネスホテルやその駐車場を超え、光沢のある外壁の建物に入る。

通勤途中のサラリーマンを真横に風俗店に入るのは気がひけた。


しかし、私の後ろを歩いていた中年男性は同じ建物に爪先を向ける。まるで親子だ。

「お連れさまですか??」
そんなわけがあるか。
朝からソープランドは盛況のようだ。

 

入店したのは6:20ごろ、開店して20分、10人ほどいる嬢は3人を残して”接客中“であった。

直感で3人のうち最も若い嬢を選ぶ。

その地域で初めて風俗店に行く際、私はネット掲示板に頼らない。

たしかに嬢に関する情報は豊富であり、彼氏や出身中学校さえ晒されていることがあるほどだ。しかしそこには一期一会はない。一期一会が当たりを引いた時の喜びを、外れを引いたときの絶望感を増幅させるのである。

番号札を受け取り待合室へ。自分以外はスーツに身を包んだ中高年が数人。サラリーマンのように見えた。目覚めの一発ということだろうか。

 

注意事項の説明を受け、カーテンをくぐると

 

そこにはコンパクトな森三中村上がいた。

 

 

コンパクトな森三中 村上

それが第一印象であった。 
顔のパンパン具合のわりに身体は普通だな、と感心するのはある種の防衛機制であろう。

村上が私の手を握り、薄暗い雑居ビルの階段をのぼりはじめる。
この後の50分へ立ち込めた暗雲を表に出さないようにすることで精いっぱいであった。


上階には行為のための部屋が並んでいた。
そのうちの一室に入り、
私は適当に出張中のサラリーマンという設定をつくり簡単な挨拶をする。

お互いに服を脱いだ。
あれがうわさに聞くスケベ椅子か…と上野動物園でパンダを見たときの気持ちを思い出す。


他愛のない話をしながら嬢が泡立てる。
俗に言う「洗体」のコーナーである。
肌が触れ合う距離になって分かったことが1つ。

この村上…毛深いッ……!!
いや、マジで毛深い。自分の前腕部よりも毛が密である。摂食障害が脳裏をよぎるが、この肉付きで摂食障害は無理でしょ。対面時よりも萎えが強いかもしれない。

 

産毛まみれの胸にはビビアンウエストウッドのネックレスが光っていた。
ふと手首を見るとスティグマが。この顔でメンヘラは無理でしょ。
そんなことを考えながら村上のおっぱいを感じる。
意外にもからだの反応はいいようでED50分男は回避できそうだ。少し悔しいが。

浴槽につかり、適当におっぱいもみもみ。顔がこっち向いてないと快適だなあ。

拝啓 お母さん
内心、村上で射●できるのか不安になっています。
1万6千円の価値とは。ソープランドとは。
それが何か見せつけてくれ……。
                    敬具

そんな気持ちでベッドに向かうのでした。